未亡人 おさじが楽しく語ります

苦しい死別を経験した、いまは明るい未亡人のはなしです

神様から黄金の冠を授かった相方

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相方が亡くなった当日、病院やら警察らやとたらい回しにされ、ようやく解放されたのが深夜でした。

泣き腫らし呆然とし、全く機能しなくなった頭と心を抱えながら、それでも何故か相方は自宅に先に戻ってる気がして、車を2時間走らせて、彼と暮らした自宅へ帰りました。

 

玄関を開けると、真っ暗でがらんとした我が家が、何故か私の知らない場所になってしまったかのような、不思議な感覚に陥ったことをおぼえています。

本来ならここで仕事帰りの彼を迎え、一緒に夕食をとり、明日に備えてぐっすり寝ている時間です。混乱したまま、集まってくれた家族と解散して、その日は泣きながら布団に入りました。

翌日、誰とどう朝を迎えたか、もう当時の記憶が曖昧なのですが、思い返せばどうやらちゃっかりしっかり寝てはいたようです。

 

さて、ここからなのですが

亡くなった翌日に、妹がこんな連絡をくれました。

「言おうかどうか迷ったんだけど… ◯◯(彼の名前)さんの夢を見てね…」

私が彼の喪失に錯乱しているのを見て、姉の夢には出てきてないのに、私のみた夢を伝えてもいいものか、と戸惑ったそうです。

私は、どんなことでも、些細なことでもいい。彼にまつわることならば全て教えて欲しいと懇願しました。

「どこかわからないけれど、背景は真っ暗だった。宇宙みたいに。でね、綺麗な、ほんとに綺麗な曇りのない黄金の冠?みたいなものを頭につけてたんだよ」

聖闘士星矢で頭にかぶってるようなね。直感的に、怪我した頭を守ってるのか、隠してもらってるのかなって感じた。」

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イメージの聖闘士星矢のシャカ

「とにかくすごく綺麗な黄金の装飾がついた冠で、神様みたいだった。辛い事故で突然亡くなったから、神様によく頑張りましたね、って冠を授かったんだと思った。」

私は、もう見ることが出来ない彼の姿を、妹の夢の中に見た気がしました。

私は「元気だった?どんな顔だった?頭以外はどんな格好をしていたの?」と突然逝ってしまった彼の今を、どんなことでもいいから少しでも知ることが出きれば、と思いしつこく訪ねました。

「格好までは…あとはよく覚えてないんだけどね、夢だから…でも全然嫌な感じじゃなくて、金色に光ってて神々しかった」と妹は言いました。

それが、妹の脳が作り出した虚像でもいい。その夢になんの確証もないけれど、でも私は妹のその夢での彼の姿を素直に信じました。

妹は不思議なものを感じやすい体質だから、彼が妹を通じて「こちらは大丈夫だよ」と伝えてくれた気がしてならなかったからです。

突然命が断たれて、本人がどんな想いでいるのか…

まだ生きていたかったと後悔しているのではないか…

自分の死を受け入れられずにいるのではないか…

苦しんでいるのではないか…

混乱して、変な世界に導かれてはいないだろうか…

 

幽霊なんてみたことがない人間なのに、なにか有り合わせの知識で、あの世という彼の魂の行く末を必死に案じていました。「変な世界に落ちては、絶対にダメだよ!穏やかで清らかな正しいところへ上がってください…」こればかり、何度も何度も、来日も来日も念じていました。

ですが、彼はきっと大丈夫、だって神様から黄金の冠を授かったのだから、きっと正しい世界に導いてもらっている。と、その後もずっと本気で、妹の夢での彼の姿を信じ、心の拠り所にしていたのです。

彼のその姿のイメージは、8年たった今でも、ずっと私のなかに、お守りのように大切に残っています。

 

 

妹は、私にはない不思議な体験をいくつも経験しています。この夢の話以外にも、彼にまつわる体験がありました。どれも、真実を証明できる根拠もなければ、確証もありません。

ですが、それでこの件に関わって哀しみにくれた我々の心が、少しでも明るく前向きになれたこと、先の希望になったことに、大きな意味があったと感じています。あの日から8年経って冷静に思い出せるようになった今でも、私にとってはこれで良かったんだと満足できているからです。

真実かどうかなんて、どうでもいいんです。

信じて楽になれれば、それでいいんです。

信じる者は救われる・・・まさにこの言葉を体験したのです。

死別の苦しみを乗り越える助けになった、そんな、妹のみた不思議な夢の話でした。